2026.5.1 | #医療 #法律
脳外科の医療事故・医療過誤とは|患者側弁護士が解説
脳外科手術後の後遺症に苦しまれているご本人・ご家族へ
はじめに
脳の手術を受けたあと、想定を大きく超える後遺症が残ってしまった。手術前には説明されていない変化が生じ、これまでの生活が送れなくなってしまった。そのような状況の中で、「手術で何かあったのではないか?」という疑問を持ちながら、どこに相談すればいいかわからないまま時間が過ぎている方は少なくありません。
本記事では、医師免許を持ち、医療過誤案件に特化して取り組む患者側弁護士・富永愛弁護士へのインタビューをもとに、脳外科の医療事故・医療過誤について解説します。
脳外科とはどのような分野か
脳外科(脳神経外科)は、脳・脊髄・末梢神経の疾患を外科的に治療する分野です。脳腫瘍、脳血管障害(くも膜下出血・脳動静脈奇形など)、外傷など、幅広い疾患を扱います。
脳腫瘍には悪性のものと良性のものがあります。悪性脳腫瘍(グリオブラストーマなど)は予後が厳しく、手術のみで根治が難しいケースも少なくありません。一方で、髄膜腫や下垂体腺腫などの良性腫瘍は、症状を引き起こしている場合に手術が選択されることがあります。
▶インタビューアー
脳外科において、医療事故が問題になりやすいのはどのようなケースでしょうか?
▶富永先生
良性の脳腫瘍に対する手術が、医療事故として相談に持ち込まれることが多いです。頭蓋骨という密閉された空間の中で腫瘍が大きくなると、良性であっても周囲の正常な組織を圧迫して症状が出てき、死に至ることもあります。だから手術が必要になる。悪性腫瘍で手術をしても、予後の観点から私たちが関与できる場面は限られますが、良性の腫瘍の場合は、「手術でより良くなるはずだ」という説明を受け、期待のもとに受けられる方が多いのです。そこで重い後遺症が残ってしまうと、「なぜこうなったのか?」という疑問が生まれてしまいます。
「取りすぎ」が引き起こす後遺症|腫瘍摘出の範囲と神経機能の保護
▶富永先生
脳手術の難しさの一つは、腫瘍の摘出範囲と神経機能の保護のバランスにあります。脳は部位によって担う機能が異なる複雑な臓器のため、どの部分をどの程度摘出するかが、術後の機能に直接影響します。
外科医は出来物があればできるだけキレイに取り除きたいという意識が働くことがあって、良性腫瘍でも積極的に摘出しようとするケースがあります。しかし、良性腫瘍の手術における最終的なゴールは、完全摘出よりも「患者さんの症状をなくすこと、悪化させないこと」であるはずです。
脳外科の専門医の先生方にもお話を聞くと、脳外科では攻めすぎないことも重要で、「取り残しがあっても症状が出なければよい」「二回目の手術を見越して安全域を保つ」といった発想が必要だとおっしゃいます。正常な組織を傷つけてしまうと、腫瘍は取れたけれど命を失ったというような取り返しがつかない事態につながることがあるためです。
もちろん、手術の判断は個々の症例によって異なり、一概には言えません。そのため脳外科手術の医療訴訟は難しい。ただ、「どこまで取るか」という判断のプロセスと、そのリスクについて患者さんに十分な説明が行われていたかが、医療事故として検討される際の一つの論点になります。
脳外科手術後の後遺症|「見えにくい」変化の重さ
脳の手術後に生じる後遺症は、部位と損傷の程度によって異なり、非常に多様です。運動麻痺や感覚障害のほか、言語障害、視野障害、高次脳機能障害などが生じることがあります。
▶インタビューアー
特に家族が直面する大変さはどのようなものでしょうか?
▶富永先生
外から見えにくい変化が多いというのが、脳外科後遺症の特徴の一つです。たとえば高次脳機能障害では、運動機能や言語は保たれていても、注意力・記憶・感情のコントロールや社会的な行動に変化が生じることがあります。例えば前頭葉が損傷されると、人格や行動パターンが変わってしまうことまであります。
座ってテレビを見られる、自分で食事もできる、でも以前とは性格がまるで違う。その変化が周囲には理解されにくく、ご家族が孤立してしまうケースや、施設への入所が必要になるほど状態が重く、家族と一緒に暮らせない状況になるケースもあります。
脳外科の後遺症は、表面から見えにくい分、社会的な理解を得るのが難しい側面があります。ご家族が感じている負担を、法的・社会的な側面から適切に支えていくことも、弁護士としての重要な役割だと考えています。
脳外科の医療事故に医師弁護士が関わる意味
▶インタビューアー
脳外科の医療事故は、どのような難しさがあるのでしょうか?
▶富永先生
脳外科は、私の経験の中でも最も難易度が高い領域の一つです。ミスがあったことを証明するステップと、そのミスと現在の後遺症が結びついていることを証明するステップ、この二段階それぞれが難しいのです。
前回お話した脊椎外科での医療事故では、最初のステップを乗り越えれば、お役に立てることが多いのですが、脳外科はその先もまだ難しい部分が残ります。脳の部位と機能の関係は極めて複雑でわかっていないことも多く、どの部位の損傷がどの症状につながるかを裁判官などの医療の専門家ではない方に説明して理解してもらうことは容易ではありません。
また、手術ビデオが残っていても、10時間以上に及ぶ手術が珍しくないので、映像を確認するだけでも膨大な時間がかかります。さらに、その内容からミスをあぶりだし読み解くには相当の知識と経験が必要です。、外科医的な視点で「このアプローチから見える解剖はどうなっているか?」「この操作の意図は何か?」執刀医が考えていることを想像できなければ、ビデオを見ても何が起きていたかが見えてきませんし、説明することもできません。
医師弁護士のダブルライセンスをお持ちの先生は増えてきています。でも、内科系の先生が多い中で、外科の現場を経験している医師自体が少ない。医師弁護士となるともっと少ない。ビデオを見ても、自分が執刀しているつもりで見なければ何も見えてきません。野球をテレビで見ているのと、バッターボックスやピッチャーマウンドに立ってプレーするのとは大きな違いがある。それと同じことです。外科的な視点があることが、脳外科の医療過誤案件でも一定の強みになると感じていますが、それでも素人バターが、高速の球を投げる専門家に立ち向かっていかなければならないのですから、相当難しいことには変わりありません。脳外科医自体の数も少ないため、協力してくださる脳外科医を見つけることも容易ではありません。
上記のような理由から、脳外科(脳神経外科)の医療事故のご相談においては、「現時点の状況・情報を整理した上で、訴訟・裁判は難しい」とお伝えしなければならないケースが他の分野より多いのが現実です。私では実力不足だと思うこともあります。ただ、それをきちんとお伝えすることも、誠実な対応の一つだと考えています。
それでも向き合う理由
▶インタビューアー
難しい分野でも取り組み続ける理由はどこにありますか?
▶富永先生
後遺症がひどいケースで、患者さんやご家族が背負う負担は計り知れません。「何もしないわけにはいかない」というご家族のお気持ちも理解ができます。勝訴か敗訴かにかかわらず、そのご家族の思いに寄り添って一緒に進む、それが脳外科に向き合うスタンスです。
裁判が難しいことを正直にお伝えしつつ、「今の状況を法的・医学的に整理することはできる」「どこに論点があるかは見極めることはできる」という関わり方をすることもあります。専門性の高い問題であるからこそ、誰かがやらなければならないと思っています。
無料医療相談のご案内
脳の手術後の後遺症について、
・手術が原因ではないかと感じており、医療事故・医療過誤の可能性を確認したい
・後遺症の状況を、法的・医学的な観点から整理したい
・他の事務所に相談したが断られた、または十分な説明が得られなかった
・まず状況を整理して、今後の見通しを知りたい
このようなお悩みをお持ちの方は、医師免許を持つ患者側弁護士・富永愛(富永愛法律事務所)へご相談ください。脳外科の医療過誤・医療事故は、医療の専門知識と法的な判断の両面から丁寧に検討が必要な分野です。裁判に進む場合も、まず整理する段階でも、専門家による助言が役に立つことがあります。
富永愛法律事務所では、脳外科の医療事故に関する初回無料医療相談を受け付けています。
医療過誤でお悩みの方へ
患者側専門の医療訴訟弁護士として、まず「何が起きたのか」を一緒に整理します
医療事故や医療過誤に直面したとき、多くの方は
「これは仕方なかったことなのか」
「誰かのミスなのか」
「病院の説明を信じていいのか」
が分からないまま、深い不安の中に置かれます。
私は、患者側専門の医療専門弁護士として、カルテ・検査結果・診療経過を医学的・法的に読み解き、「何が起きたのか」「争うべきか」「争うべきでないか」を、正直にお伝えしています。無理に裁判を勧めることはありません。しかし、争うべき医療過誤を見逃さないことは、患者側弁護士としての責任だと考えています。
こんな方はご相談ください
- 突然の死亡・重い後遺障害について、病院の説明に納得できない
- 医療過誤かどうか分からないが、モヤモヤが残っている
- 他の弁護士に相談したが「医療は難しい」と言われた
- 病院や保険会社の対応に不信感がある
- 裁判をすべきか、話し合いで解決すべきか判断できない
ご相談の流れ
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1. お問い合わせ
フォームまたはお電話でご連絡ください。
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2. 資料の確認
お持ちのカルテ・診療情報・説明書などを拝見します。※揃っていなくても構いません。
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3. 医学的・法的な初期評価
医療専門弁護士として、医療過誤の可能性と今後の選択肢を整理します。
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4. 方針のご説明
訴訟・示談・何もしない、すべての選択肢を正直にお伝えします。

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この記事を書いた人
(プロフィール)富永愛法律事務所
医師・弁護士
富永 愛(大阪弁護士会所属)弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。