2026.4.27 | #医療
脊椎外科の医療事故・医療過誤とは|患者側弁護士が解説
手術後の後遺症に「納得できない」と感じたご本人・ご家族へ
脊椎の手術を受けたあと、術前に説明された内容とは大きく異なる状態になってしまった。以前できていたことができなくなった。こうした状況の中で、「これは医療事故だったのではないか?」「誰かに相談できないだろうか?」と感じながら、どこに連絡すればいいかわからないまま時間が過ぎている方は少なくありません。
本記事では、医師免許を持ち、医療過誤案件に特化して取り組む患者側弁護士・富永愛弁護士へのインタビューをもとに、脊椎外科の医療事故・医療過誤について、次の点を解説します。
・脊椎の手術に関連する医療事故の特徴
・後遺症が重篤になりやすい理由
・「医療事故かもしれない」と感じたときの相談のタイミングと進め方
脊椎外科とはどのような分野か
脊椎(背骨)には、脳からつながる脊髄が通っており、そこから枝分かれした神経が全身へと伸びています。脊椎の疾患では、椎間板の変性や骨の変形などにより、この神経が圧迫されることで、手足のしびれや痛み、運動障害などの症状が生じます。代表的な疾患には椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などがあります。
こうした脊椎疾患の多くは、悪性腫瘍(がん)ではなく良性の疾患です。神経を圧迫している組織を取り除くことで症状が改善するケースも多く、手術治療が選択されることがあります。一方で、手術によって神経を損傷した場合、深刻な後遺症が生じる可能性があります。
インタビューアー
脊椎外科の医療事故は、どのような特徴があるのでしょうか?
富永先生
脊椎の病気は良性の疾患が多く、適切な手術が行われれば症状が大きく改善することもある分野です。それだけに、患者さん本人やご家族も、手術前後の状態の変化が分かりやすい。「手術前は歩けていたのに術後に歩けなくなった」という変化は、専門家でなくても明確に気づくことができます。裁判官のような医療の専門家ではない方にも、状況が伝わりやすいという特徴があります。
内臓の病気であれば、手術の影響なのか病気の進行によるものなのか、判断が難しいことも多い。その点、脊椎は神経の症状として明確に現れやすく、因果関係が見えやすいケースが多いと感じています。
脊椎手術後の後遺症|神経損傷が引き起こす重大な影響
脊椎手術において最も深刻なリスクの一つが、手術中の神経損傷です。脊髄や神経根が損傷を受けた場合、その部位や程度によって、さまざまな後遺症が生じることがあります。
たとえば、胸腰椎の手術で脊髄が損傷された場合、両下肢の運動麻痺や感覚障害、排尿・排便障害などが生じることがあります。頸椎(首)の手術では、四肢(両手・両足)の麻痺につながるケースもあります。神経組織は再生能力が限られており、一旦損傷すると完全な回復が困難な場合があります。
こういった後遺症が起きてしまったとき、患者さんやご家族が背負う負担は計り知れません。手術前に普通に生活できていた方が、術後に全く状況が変わってしまう。しかも一生続く可能性がある。私がこの分野に注力するようになった理由の一つは、そういった重篤な後遺症を抱えた方や、ご家族からのご相談が多かったからです。
手術は適切な技術と計画のもとに行われる必要があります。患者さんの解剖学的な特徴や状態を丁寧に評価し、術式の選択や手術計画を慎重に行うことが、リスクを最小限にするためには重要です。そうした手順が十分に踏まれたかどうかが、医療事故としての検討において重要な論点になります。
「こんなはずじゃなかった」|手術への期待と後遺症の落差
インタビューアー
脊椎の医療事故では、患者さんやご家族はどのような思いを抱えることになるのでしょうか?
富永先生
脊椎の手術は、「機能外科」と呼ばれることがあります。癌を取り除く手術や、心臓・血管を修復する手術とは異なり、まだ機能している体の部位をより良くするための手術です。そのため、手術に対する期待感が大きくなりやすいのです。
命には関わりがないが、「仕事で手が使えなくなると困るから治したい」「痛みをとって以前のように動けるようになりたい」といった積極的な理由で手術を決断される方が多い。がんを取らないと死にますよ、という手術とは違うのです。そのため、術前の説明では改善が見込めると聞いていたのに、結果として後遺症が残ってしまった場合、ご本人もご家族も、どこに感情を向ければいいかわからない状態になることがあります。
「自ら望んで手術を選択した」という思いと、「こんな結果になるなら、やらなければ良かった」という後悔。その両方が混在している中で、誰にもぶつけようのない思いを抱えて相談に来られるケースが多いと感じています。
手術の判断と医療事故|慎重な手術計画が重要な理由
インタビューアー
医療事故に至りやすいケースには、何か共通する特徴があるのでしょうか?
富永先生
脊椎外科の専門医の先生方とお話すると、慎重な先生ほど「すぐには手術を決めない」とおっしゃいます。まず手術以外の方法として保存療法(薬物療法や理学療法など)を十分に行い、その上で患者さんとの信頼関係をしっかり築いて希望を聞きながら手術に進む。病気の種類やタイプによってはすっきり治らないこともある、症状が改善しない場合もある、ということを事前に丁寧に伝えた上で、患者さんが十分に理解・納得した状態で手術に臨んでもらう。
一方で事故につながりやすいケースでは、患者さんの解剖学的な個別の状態を十分に評価することなく、画一的な方法で手術が進められていることがあります。脊椎の形状や状態は個人によって異なり、それぞれの患者さんの状態に合わせた手術計画が必要です。また、手術前に「必ず治る」「私が治してあげる」という断定的な説明が行われ、結果として十分なインフォームドコンセントが得られていないケースも問題になることがあります。
この点は、私たちの医療過誤弁護の仕事にも通じるところがあります。ご相談をいただいたからといって、すぐに受任するわけではなく、本当にお役に立てるかを慎重に見極めた上で十分に納得してもらってから進む。丁寧に見極め話し合いながら進めていくことが、最終的な結果につながると考えています。
病院側がミスを認めにくい理由|賠償額と保険の仕組み
インタビューアー
脊椎の医療事故は術後の変化に気付きやすいというお話がありましたが、病院側が手術ミスを認めないこともあるのでしょうか?
富永先生
あります。うちの事務所に来る方の中には、他の弁護士事務所に相談して断られた後で頼って来られるという方が、脊椎では多い印象です。明らかに状態が悪化しているのに、病院はミスではないと主張している。
理由のひとつは、賠償額の問題です。後遺症が重篤であるほど、介護費用や逸失利益も加わって、賠償請求の金額が大きくなります。医療機関や医師は通常、万が一事故を起こしてしまったときのために医療賠償責任保険に加入しています。その保険会社が賠償交渉に関与してくることで、問題がこじれるケースがあります。交渉相手の弁護士さんが医療についての知識がなく、具体的な話が出来ずにこじれることもあります。
また、脊椎手術には一定の合併症リスクが伴うことも事実であり、術前の説明でそのリスクについて記録が残っている場合、「説明した範囲の合併症だ」という立場をとる場合もあります。だからこそ、何が起きたかを医学的・法的な視点から丁寧に検証し、相手方に証拠を示しながら説得することが重要になります。
脊椎の医療事故を疑ったら|相談のタイミングと進め方
インタビューアー
脊椎の医療事故かもしれないと感じたとき、いつ・どのように相談すればよいでしょうか?
富永先生
術前に説明されていた内容と大きく異なる症状が、手術後に急激に現れた場合は、まずご相談いただくことをお勧めします。手術中の状況はご家族には見えませんが、「原因は手術以外に考えにくい」という状況であれば、早めに相談していただいた方がいい場合もあります。
ただ現実には、「しばらくリハビリをすれば回復するかもしれない」と説明されて、時間が経ってからご相談に来られる方が多いです。まずリハビリの継続をすることが重要なケースもありますし、医師から「もう少し様子を見ましょう」と言われてその期間が長くなることもある。
一方で、証拠となる資料(手術記録、モニタリングのデータ、手術ビデオなど)は、時間が経つほど入手が難しくなる場合があります。内視鏡を使った手術であれば映像記録が存在する場合もあります。こうした資料をどのように保全するかについても、早めにご相談をいただければ、適切なアドバイスが可能になります。
私たちの事務所では、ご相談をいただいてもすぐに法的手続きを進めるわけではありません。まずリハビリの経過を見ながら、証拠を集め、リハビリ中の状態変化や訴えをしっかり記録に残しておいて、状況を丁寧に把握するところから始めます。リハビリで治ったなら「良かったですね」で終わることもあります。脊椎外科では、実際に動き出すのは、ご相談からしばらく経ってやはり後遺症が残っている、という場合が多いです。
医師免許を持つ弁護士だからできること
インタビューアー
医師免許を持つ弁護士が関わることで、脊椎外科の案件においてどのような違いが生まれるのでしょうか?
富永先生
人間の体の構造や、外科手術の方法を知っているかどうかで、外科の分野は医療記録の読み解き方が変わります。どの部位に何のアプローチを行ったか、その操作の目的は何か、どの段階で何が起きたと考えられるか。こうした視点は、外科の現場を経験し、見たことがないと想像できません。
最近の手術では内視鏡や術中モニタリングの記録が残ることも多く、映像や数値データを読み解く能力が求められます。手術書の文字を読んでいるだけでは分からない立体感を説明できるかどうかが、裁判官や相手方への説得力に影響することがあります。
それだけで全てが解決するわけではありませんが、医療記録を正確に読み解き、何が問題だったかを適切に整理することができる。それが患者側の弁護士としての私の役割の一つです。
無料医療相談のご案内
脊椎の手術後の後遺症について、
・手術が原因ではないかと感じており、医療事故・医療過誤の可能性を確認したい
・他の事務所に相談したが断られた、または十分な説明が得られなかった
・リハビリ中だが、記録をどのように残しておけばよいか知りたい
・まず状況を整理して、今後の見通しを知りたい
このようなお悩みをお持ちの方は、医師免許を持つ患者側弁護士・富永愛(富永愛法律事務所)へご相談ください。脊椎外科の医療過誤・医療事故は、医療の専門知識と法的な判断の両面から検討が必要な分野です。まず「状況を整理すること」から始めることができます。
富永愛法律事務所では、脊椎外科の医療事故に関する初回無料医療相談を受け付けています。
医療過誤でお悩みの方へ
患者側専門の医療訴訟弁護士として、まず「何が起きたのか」を一緒に整理します
医療事故や医療過誤に直面したとき、多くの方は
「これは仕方なかったことなのか」
「誰かのミスなのか」
「病院の説明を信じていいのか」
が分からないまま、深い不安の中に置かれます。
私は、患者側専門の医療専門弁護士として、カルテ・検査結果・診療経過を医学的・法的に読み解き、「何が起きたのか」「争うべきか」「争うべきでないか」を、正直にお伝えしています。無理に裁判を勧めることはありません。しかし、争うべき医療過誤を見逃さないことは、患者側弁護士としての責任だと考えています。
こんな方はご相談ください
- 突然の死亡・重い後遺障害について、病院の説明に納得できない
- 医療過誤かどうか分からないが、モヤモヤが残っている
- 他の弁護士に相談したが「医療は難しい」と言われた
- 病院や保険会社の対応に不信感がある
- 裁判をすべきか、話し合いで解決すべきか判断できない
ご相談の流れ
-
1. お問い合わせ
フォームまたはお電話でご連絡ください。
-
2. 資料の確認
お持ちのカルテ・診療情報・説明書などを拝見します。※揃っていなくても構いません。
-
3. 医学的・法的な初期評価
医療専門弁護士として、医療過誤の可能性と今後の選択肢を整理します。
-
4. 方針のご説明
訴訟・示談・何もしない、すべての選択肢を正直にお伝えします。

-
この記事を書いた人
(プロフィール)富永愛法律事務所
医師・弁護士
富永 愛(大阪弁護士会所属)弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。